WebMoney インタビュー Interview WebMoney インタビュー Interview #02

C Channel株式会社 代表取締役社長 森川 亮氏 インタビュー C Channel株式会社 代表取締役社長 森川 亮氏 インタビュー

C Channel株式会社 代表取締役社長

森川 亮もりかわ・あきら

1967年、神奈川県生まれ

大学卒業後、日本テレビ放送網株式会社、ソニー株式会社を経て、2003年にハンゲームジャパン株式会社(現:LINE株式会社)入社。2007年、同社の代表取締役社長就任。任期中に「NAVER まとめ」や「LINE」など、新しいプラットフォームに挑戦。現在は、女性向け動画メディア「C CHANNEL」等を運営するC Channel株式会社の代表取締役社長。

高津 祐一さんのプロフィール写真 高津 祐一さんのプロフィール写真

01 01 ゲーム業界にとって電子マネーという存在が
必然だった理由

ハンゲームジャパン時代、電子決済を始められた経緯を教えていただけますか?

森川当時(電子決済導入以前)のゲームはPCが主流で、決済方法はクレジットカードか、銀行振込、コンビニ支払いという選択肢でしたが、2004年あたりから、オンラインゲームにも若年化の波がやってきました。フリーミアムとガチャの組み合わせが一気に盛り上がった時期でもあり、ハンゲームでもアバターガチャを導入して大ヒットしましたが、若年層は課金したくても自分のクレジットカードも銀行口座も持っていない。その解決策として、電子マネー決済を導入しました。

そこにはユーザーのどういう意識の流れがあったのでしょうか?

森川ガチャが出現する前のアイテム入手方法は、クエストクリアが主流でした。特にレアアイテムは買って手に入れるものではなく、高難度のクエストをクリアして集めるもので、元来はそれがゲームの楽しさ醍醐味だったのですが、フリーミアムモデルの出現で世界が変わりました。ゲームのプレイ時間が短くなったことで、長い道のりを経てやっとアイテムを手にするゲームシステムだと辞めるユーザーが増えてきたのです。その解決策として、お金を払ってサクッとアイテムを手に入れるというモデルが受け入れられたと考えています。このユーザーニーズの変化をいかに捉えるかが、当時の一番の研究対象でした。

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このニーズの変化は、時代によるゲームモデルの変化が一番大きかったのでしょうか。

森川時代、つまりゲームを遊ぶプラットフォームの変化も、ゲーム市場に大きな影響を与えた要因です。メイン市場がPC、ケータイ、スマホと変わっていくなかで、PC時代は3Dなどリッチな表現で深く遊べるコンシューマーゲーム、ケータイ時代は女性ユーザーが増加し気軽に遊べるゲーム、スマホになるとソーシャルの要素が加わり一緒に楽しめるゲームと、プラットフォームの変化によって遊び方も変わってきました。

一方、国によってもゲームの接し方が違っていまして、例えば「協力してモンスターを倒す」というゲームがその代表例ですが、中国や韓国ではまったく人気が出ておりません。その理由を調べてみると「みんなで寄ってたかってモンスターを倒すのは可哀想じゃないか」というわけです。ではどういうゲームが好まれているかというと、「人対人」の自分の実力を問われる対戦ゲームが好まれています。逆に日本のゲームのトレンドは、ゲーム内でのチームワーク、コミュニケーションが重要視されていますので、もしかしたら日本は、eスポーツのような人対人で戦うようなゲームは向いていない国民性かもしれません。

ゲームの志向で国民性がわかるという観点は面白いですね。

森川国民性もそうですが、もう一つ、若い人が今どういう方向に進んでいるのか、それを新ゲームの戦略にどう落とし込んでいこうか、ということも常に研究していました。その時の答えとしては、ゲームを続けるモチベーションの一つとして、承認欲求を仮想世界で実現することが、ゲームの醍醐味になると考えました。

そもそもゲームに詳しかったのでしょうか?

森川実はもともとゲームがあまり詳しくはなかったです(笑)。
わかっていなかったからこそ、やってこられたというのはあると思います。専門知識がない一方で、国民性もそうですが、トレンドの研究はよくやっていました。あるゲームが流行った時に、世界観、キャラクター、ゲームバランス、何がヒットの要因だったのか?それは常に研究していました。

僕がいた会社でも、ゲームが好きでしょうがなく、熱量の高いクリエーターがたくさんいましたが、当時よくそんな社員に「社長は面白いゲームを作りたいのか?儲かりたいゲームを作りたいのか?どっちかにしてくれ」と詰め寄られる場面もあったのですが、そんな時はいつも「面白くなくて、儲かるゲームはあるのか?」という話をしていましたね(笑)。

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02 02 電子マネーを取り巻くウェブ業界は
今後何が求められていくのか?

冒頭でフリーミアムについてお話がありましたが、ウェブ業界における収益は、ゲームがやはり強い状況です。今後もその状況は続くでしょうか?

森川前職でゲームの事業やWEBメディア、コミュニケーションツールの事業をやっていると、景気が悪いとゲーム事業が伸び、景気が良くなると広告事業が伸びる。景気によって売り上げが変動していることがわかりました。

僕の中でゲームの課金というのは、バーチャル領域のECだと思っています。だから今、ゲーム課金がなぜ堅調なのかというと、今の日本の若い人はバーチャル世界の方がリアルな世界より楽しいということではないでしょうか。バーチャルで空を飛ぶ世界なら羽が必要だから買うし、水に潜る世界なら潜水服が必要だから買う。現実でもバーチャルでも、人は楽しいことに対してお金を使うものですからね。

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これまで新規サービスやマネタイズが未開拓の領域を一貫して歩まれていますが、成功のポイントはどこにあるのでしょうか?

森川比較的日本のベンチャーって、海外や他社の成功事例をコピーする方法で成長するケースが多いと思っていますが、 自分の場合、思いつくサービスが初めてのものが多くて、なかなかコピーする相手がいない。

じゃあ、どうするのか?

どの分野、領域でも「人の本質を突き詰める」ことしかないと思っています。
その本質を見つけるポイントは、結局、「何が幸せにつながるのか」ということです。繰り返しになりますが、幸せにならなければ人はお金を使いません。そうすると、今お金を使っている人の求めているものは何か?そこを深く掘り下げていくことが一番大事だと思っています。
あとはその突き詰める課程でいろんな策をひとつずつ試していって、お客様の反応を見ながら、また深堀していくようなことを続けています。
今、やっている動画メディア「C CHANNEL」は、若い女性向けのサービスです。でも若い女性のデータだけでは本質は見えてきません。そこで今は、「カワイイの本質」を掘り下げています。
女性が「これカワイイ」って言うの、聞いたことありますよね。「このカワイイってなんだろう?」というところを色々深掘りして見えてくるものをひたすら突き詰めればいいだけなんですが、やはりそれが見えてくるまでは相当苦労しましたし、今もまだわからない部分が多くあります。他のサービスでも、そこが成功のポイントではないでしょうか。

最後に。WebMoneyも20周年を迎え、ウェブビジネス業界にとって電子マネーの取り巻く世界も変化しています。この状況をどう見ていますでしょうか?

森川電子マネーの領域とポイントの領域がどんどん曖昧になっている中で、ユーザーの利便性がどこまで追求されるのか。日本では資金決済法が制定されて以降、法的な管理はされていますが、海外に比べて自由さに欠ける印象です。海外では整備されていないグレーゾーンがあるものの、様々な領域で電子マネーが加速化しています。お金というものの概念がもう少し自由になってきて、お金と信用がイコールになる時代に、電子マネーの役割が大きくクローズアップされてくるのではないでしょうか。